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たびよみ

旧信越線跡を歩く
群馬県・安中市

※この記事は2018年旅行読売10月号に掲載されたものです。

中山道の難所、碓氷(うすい)峠を越えて群馬県横川と長野県軽井沢を結んでいた旧信越線。長野新幹線(現北陸新幹線)の開通に伴い1997年に廃止されたが、廃線のレールを走るトロッコ列車に乗れて、廃線跡を鉄道遺産に触れながら歩けるなど、一度に二つ楽しめるのが「遊歩道アプトの道」だ。

5号トンネルを出るとすぐめがね橋の上を歩く。右の山側に廃線跡が見え、左側の下方は旧道だ

信越線横川駅から徒歩2分の碓氷峠鉄道文化むら入り口付近にアプトの道の起点がある。廃止区間の通称碓氷線は全長11.2キロで高低差553メートル、最大勾配66.7パーミルの峠越えが障壁だったが、明治政府は歯形のレール(ラックレール)と歯車をかみ合わせて急勾配を上るアプト式鉄道を導入。廃止から時を経て旧熊ノ平駅までの約6キロを整備し、2012年にその名を冠した遊歩道が開通した。

まずは横川機関区跡にできた碓氷峠鉄道文化むらへ。旧信越線の歴史資料のほか、実物のラックレールやアプト式機関車ED42などが見られる。職員の赤田清さんは、「トロッコ列車に乗れば、線路脇の電柱が傾いて見え、峠へ向かう勾配を体験できます」と語る。

トロッコ列車の先頭デッキからは勾配を上っているのがわかる

旧信越線のレールを利用し、ここから2.6キロ先の峠の湯を結ぶトロッコ列車(土・日曜、祝日運行。11月25日まで)に乗り込んだ。2両編成のうち先頭が展望スペースのあるオープン型客車。木々の間をのんびりと進んでいくと、季節の匂いが感じられる。

途中、赤レンガ、瓦葺(かわらぶ)き平屋の旧丸山変電所で5分停車。この路線の歴史を物語る貴重な遺産だ。ここから先がアプト区間で、線路が上に延びていくように見え、きつい勾配を体感した。

名物駅弁「峠の釜めし」とそばのセット

約20分で終点に到着。峠の湯1階のレストランで腹ごしらえだ。「峠の釜めし」にそばが付いたセット1350円を注文。横川駅の駅弁立ち売りを思い出し、懐かしい気分で味わった。

アプトの道を歩き出す。熊ノ平までに10のトンネルがあるが、レンガ造りの古びたトンネルは明治時代の遺物。当時の掘削技術を考えると感慨深い。歩き始めて1時間弱、5号トンネルを抜けると眺望が開け、第3橋梁、通称めがね橋の上に出た。碓氷川に架かる日本最大のレンガ造りのアーチ橋で、長さ91メートル、高さ31メートル。観光名所でもあり、ツアー客の一団が下の国道から階段を上がってきて、橋上からの景色に感嘆している。アプト式の廃止後、北側に碓氷新線が建設されたが、山側の木立の中に新線の橋梁と線路が見えた。

202万個以上のレンガを使って造られた4連アーチ式のめがね橋

めがね橋を渡るとすぐ、546メートルと最長の6号トンネル。天井にSLの排煙用の穴や横坑がそのまま残っている。めがね橋から30分ほどで熊ノ平に到着だ。1950年の土砂崩落の被害者を慰霊する殉難碑が立ち、朽ち果てた変電所が廃墟の様相を見せている。この先も線路は続いているが、トンネルの入り口には柵が張られ立入禁止。錆びた線路に草が茂り、もうここを列車が走ることはないのだと思うと、寂寥(せきりょう)感が増してくる。

帰路は来た道を戻る。峠の湯に着いたときには疲労困憊(こんぱい)。肌触りのいい湯に身を沈めると、疲れが抜けていくようだ。英気を養い、横川駅まで約1時間歩いて帰途についた。

文・写真/田辺英彦

【問い合わせ】
安中市観光機構/電話027・329・6203

【交通】
上越新幹線高崎駅から信越線35分の横川駅下車(横川駅発11時10分でめがね橋、熊ノ平などに停車する軽井沢行きのバスが1日1往復、10月6日〜11月25日運行。上りは熊ノ平駐車場13時14分発、めがね橋13時22分発)

■施設データ

碓氷峠鉄道文化むら
9時〜16時30分(冬季は〜16時)/火曜休(祝日の場合は翌日休)/500円(トロッコ列車片道900円、往復1300円)/電話027・380・4163

峠の湯
10時〜20時30分/第2・4火曜休(祝日の場合は翌日休)/600円/電話027・380・4000(レストランは11時〜14時)
※峠の湯の先に自動販売機はないので飲料はそこまでに用意。
※緩やかな上りなので初心者でも楽に歩ける。
※トイレは峠の湯、碓氷湖畔、めがね橋駐車場にある。