「温泉大国」の日本の中でも、九州は全国屈指の規模の温泉郷や、個性的な秘湯があり、温泉ファンにも人気の高いエリアです。その中でも温泉好きなら一度は行きたい名湯10か所を前後編に分けて紹介します。後編は熊本、長崎、鹿児島の3県です。
1.九州の名湯10選 後編
1-1. 黒川温泉(熊本)

熊本・大分県境の小国町にある黒川温泉は、昔は山あいのひなびた温泉地でしたが、今では九州でも屈指の人気温泉地になりました。地元の人たちが「上質な里山の温泉地」を目指して植樹などの環境整備を行い、そんな里山風景に溶け込む大露天風呂を備えた古民家風の宿が増え、温泉ファンの心をつかむ環境ができあがったのでした。
黒川温泉の「入浴手形」(有料)は、「街全体が一つの宿 通りは廊下 旅館は客室」をキャッチフレーズに温泉地全体を盛り上げようする黒川温泉らしいアイテムです。温泉街に20か所以上ある露天風呂のうち3か所に入浴できるというもので、これを使って温泉めぐりをする湯客が増えました。黒川温泉には単純温泉や硫黄泉など7種の泉質があり、各宿も露天風呂に趣向を凝らしており、異なる湯と風呂を楽しむ湯めぐりにぴったりです。食事処や土産物店に寄りながら浴衣姿で温泉街をそぞろ歩く、湯めぐりを楽しみましょう。
交通は熊本駅、熊本空港から九州横断バス、博多、福岡空港から高速バスが出ています。鉄道は、日豊線の霧島神宮駅で霧島温泉郷方面行きのバスに乗れば、霧島神宮や神話の里(道の駅霧島)30分ほどで温泉に着きます。
1-2. 雲仙温泉(長崎)

島原半島のほぼ中央、標高約700mの高原にある雲仙温泉は、長崎県を代表する温泉地です。硫黄のにおいが立ち込め、熱い温泉と湯けむりが地表に噴き出す「雲仙地獄」は、江戸時代のキリシタン殉教地という悲しい歴史を秘めながら、今では雲仙温泉のシンボルとして知られています。大叫喚やお糸など30ほどの地獄のそばを通る散策路が整備され、展望所や休憩所、温泉たまごの販売店などもあり、ゆかた姿の湯客が歩いているのを見かけます。
「雲仙つつじ」とも呼ばれるミヤマキリシマの名所で、花期の4月下旬~5月中旬は雲仙地獄から仁田峠一帯の山肌がピンク色に彩られます。この時期は花好きや山歩きが好きな方にもおすすめです。

国内最初期の高原リゾートとして開発された歴史もユニークです。1935年にオープンした雲仙観光ホテルの昭和初期のモダンな洋風建築が残り、クラシックホテルと呼ばれています。明治の開国後、港のある長崎の外国人が、登山や避暑目的で訪れたことがリゾート開発のきっかけだったそうですが、雲仙の自然に魅力を感じたからこそ、彼らはこの地を避暑地に選んだのでしょう。クラシックホテルがある高原リゾートという点で、軽井沢や日光と似ているかもしれません。現在は20軒ほどの旅館、ホテル、民宿が点在しています。
交通は、長崎駅、諫早駅からバスで1時間30分~40分。長崎空港からのバスは運休中です(2026年2月現在)。熊本方面からは、島原港や口之津港からバスが出ています。
1-3. 霧島温泉郷(鹿児島)

鹿児島県は霧島山や桜島、開聞岳などの活火山が多く、その近くに必ず名湯があります。霧島山は標高1700mの韓国岳(からくにだけ)をはじめ、日本神話の天孫降臨の伝説が残る高千穂峰や、2011年に約300年ぶりに噴火した新燃岳など、20を超える火山が連なります。そのマグマで温められた地下水が温泉となって湧き出しているのが霧島温泉郷です。
霧島山中腹の標高600m~850mに、丸尾温泉、栗川温泉、硫黄谷温泉、関平(せきひら)温泉、新湯温泉、殿湯温泉、湯之谷温泉など9つの温泉地が点在し、大型ホテルから湯治向けの湯宿まで個性豊かな大小の宿があります。有名なのは、巨大な庭園大浴場を持つ霧島ホテル(硫黄谷温泉)や、露天風呂から桜島の絶景を眺める旅行人山荘(丸尾温泉)などです。
霧島は霧島錦江湾国立公園の一部となっており、火山湖やカルデラなど、さまざまな火山地形が見られ、その地質的な特徴から日本ジオパークに認定されています。信仰の地でもあり、天孫降臨伝説のある高千穂峰の麓には6世紀創建と伝わる霧島神宮が鎮座しています。霧島温泉郷はこうした地を巡る拠点として、また霧島山登山の拠点としておすすめです。
交通は、鹿児島空港から温泉行きの路線バス30~40分で霧島温泉郷に到着します。日豊線の霧島神宮駅からはバスで30分ほどです。
1-4.妙見温泉(鹿児島)
霧島市隼人(はやと)町の天降川(あもりがわ)沿いにある妙見(みょうけん)温泉は、温泉ファンなら一度は行きたい名湯です。リーズナブルな湯治向けの田島本館、「日本秘湯を守る会」加盟のおりはし旅館、憧れの高級宿として知られる妙見石原荘や忘れの里 雅叙園(がじょえん)など、個性的な宿が10軒ほどあり、好みや予算に応じて選べます。一部の宿は渓流沿いに露天風呂を備え、せせらぎを聞きながら名湯につかれます。川沿いには初夏は新緑、秋は紅葉風景が広がり、近くに吊り橋や滝もあるので、散策におすすめです。
温泉の泉質は主にナトリウム・カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩泉で、ミネラルや炭酸成分を多く含み、どちらかと言うと成分の濃いパンチの強い温泉です。適応症はやけど、きりきず、慢性皮膚病などで、特に古くから外傷にきくとされて「キズ湯」と名付けている宿もあります。すべての宿が自家源泉をかけ流しており、白や茶、緑など宿や日によって色が変わる新鮮な温泉が楽しめます。温泉振興会では消化器病や糖尿病に適応する飲泉もすすめており、昔ながらの湯治目的のお客さんもいるようです。この温泉パワーと渓流沿いの静かな自然環境が、妙見温泉の一番の魅力になっています。
天降川上流には、同じ新川渓谷温泉郷の安楽温泉や塩浸(しおびたし)温泉など、良質な源泉かけ流しの温泉が点々とあり、また20km北には霧島温泉郷もあり、温泉ファンは湯巡りを楽しみたいエリアです。
交通は鹿児島空港が近く、空港から路線バスで20~30分です。日豊線の隼人駅からはバスで20分ほどです。
1-5.指宿温泉(鹿児島)

指宿(いぶすき)温泉は薩摩半島最南端の指宿市にある温泉で、南国情緒あふれる風景と砂浜に湧く温泉を利用した砂蒸し温泉で知られています。年間を通して温暖な気候が続き、昭和のハネムーンブームの時には「東洋のハワイ」とも呼ばれました。
指宿に来たならぜひ入りたいのが、砂の中に体を埋める砂蒸し温泉です。指宿最大の砂むし温泉立ち寄り施設、砂むし会館「砂楽(さらく)」では、干潮時には波打ち際で、満潮時には屋根付きの砂むし場で砂浴を体験できます。パラソルが並ぶ砂浜の砂の中に入ると、体全体に砂の重みが感じられ、じわじわと体の芯まで温まっていきます。江戸時代の文献にも砂蒸し湯治として記録された、歴史のある入浴法です。泉質はナトリウム-塩化物泉で、高温のため潮が引いていくときには砂浜に湯けむりが立ちのぼるそうです。
約50軒の宿泊施設のほか、日帰り温泉施設や公衆浴場もたくさんあります。錦江湾と開聞岳(かいもんだけ)を望む絶景露天風呂の「たまて箱温泉」、噴気を源泉とする湯治施設「うなぎ温泉 松前」、江戸時代に薩摩藩主も訪れた「二月田温泉 殿様湯」、25mの温泉プールやサウナを備える「レジャーセンターかいもん」などです。個性豊かなさまざまな施設を巡ってみてはいかがでしょうか。
交通は、鹿児島中央駅から指宿枕崎線1時間30分、またはバス1時間40分で指宿駅に着きます。鹿児島中央-指宿駅間にはD&S列車「特急 指宿のたまて箱」も運行しており、鉄道好きの人にはおすすめです。
2. 九州八十八湯めぐり
「九州八十八湯(とう)めぐり~九州温泉道~」は、数ある九州の温泉施設の中から、温泉名人と呼ばれる選定委員たちがホンモノにこだわって選んだ148か所(2026年2月現在)を巡るのを修行に見立て、真の温泉通を目指す体験型イベントです。25年に設立15周年を迎えました。「御湯印帳(スタンプ帳)」に各施設のスタンプを集め、多く集めるほど昇段し、全7県88湯制覇で「泉人」に認定されます。
今回紹介した九州の名湯10か所はすべて選定されており、「御湯印帳」を片手に九州の名湯を回る旅はいかがでしょうか。
3.旅行ツアーを利用して九州の名湯へ
九州の温泉旅行を計画しているものの、手配が面倒な人やおすすめ宿を知りたい人は、旅行会社の企画ツアーを利用するのも一案です。読売旅行では、各温泉地への交通と宿泊代、現地でのオプショナルツアーなどがセットになった旅行商品を用意しています。ぜひご活用ください!
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とりっぷナビ編集部


























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