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8月14日(火)~8月30日(木)

世界に氷床といわれる広大な氷河は南極大陸とグリーンランドにしかない。貴重な淡水資源である氷河はその80%が南極氷床に、10%がグリーンランド氷床に、そして残りの10%はアルプスやその他の小さな氷河の合計である。グリーンランド氷床から海に押し出される氷山も昨今の温暖化現象のためにその生産速度が速まり、量も増えている。北緯75度付近のメルビル湾には次々と生産されるさまざまな形をした巨大氷山が所狭しとひしめき合い、海面が見えないほどである。さらに南のディスコ湾内のイルリサート(旧名ヤコブスハウン)は1日当たり19mという速さで流れる氷河から生まれた氷山で湾内が埋め尽くされてしまっていて、世界遺産にも指定されている。それらの氷山はやがてバフィン湾で大きく迂回してラブラドル海流にのって南下する。タイタニック号を沈めた氷山もその中の一つであった。

グリーンランド氷床、氷河そして生産される氷山を最大限楽しむためには砕氷船に搭載している2機のヘリコプターが不可欠である。船から飛び立ったヘリコプターにのって上空からサーカー場程もある大きな氷山、ヨーロッパのお城のような形のもの、そして不気味な青い色のクレバスの口をあけた氷山などが一手にみえる。かなた奥にはいまにも落ちそうな氷河の先端部分が傾いている。遊覧飛行の後は船付のゾーディアック(エンジン付きのゴムボート)で摩天楼のような氷山の間の迷路を巡りながら透き通った氷をすくい、今夜はオンザロックで氷に閉じ込められた空気がはじける音を聞きながら数千年前の世界に思いをはせてみよう。

我々が乗ったカピタン・フレブニコフ号には各分野の専門家が乗っていて氷河、地質学、鳥やアザラシなどの生物学、そして探検歴史、民俗学などの北極講座が提供されてより深い理解が得られるのだ。最も暖かい月の平均気温が5℃を超えない、厳しい環境の高緯度北極でさえ、氷河期の水位が低かった頃のベーリンジア陸橋沿いにシベリヤから遊牧民族がマンモスやジャコウウシを追いながら東への旅を始めた。カナダのエルズミヤ島には勇気ある5千年位前まで遡る当時の狩人たちの痕跡がたくさん残っている。海氷があればヘリコプターで、融けていればゾーディアックで上陸してそんな場所にも行ってみる。あるものは小さくて美しい白クマや北極狐の彫り物を残し、あるものは隕石の鉄からやじりを作った。古代から今も続くポリニヤ(氷湖)にはアザラシやセイウチの獲物も人も集まり交易も行われたようだ。半地下式の冬の住居跡にはヨーロッパからの毛織物の切れ端も発見されている。だが、カヤックや大型のウミヤックを使った捕鯨やアザラシ猟は今のイヌイット族の直接の祖先であるチューレー族が初めてもたらしたようだ。氷の家のイグルーも彼らの発明のようだ。数千年前の石囲いの炉には食べかけの骨や料理に使ったであろう焼き石も転がっている。それに比べれば、東洋への近道を求めてやってきた探検隊250名全員が遭難してしまった悲劇や、飢餓入り江で三回目の越冬をしながら救援を待った話はつい最近の出来事なのだ。

温暖化が進むとはいえ、まだまだ厳しい極北の自然環境に適応できたものだけがその豊かな資源の恩恵を受けられるのが北極だ。その北極の厳しい美しさをわれわれの子孫にまで伝えられるか否かは今の我々にかかっているといえよう。
カナダ北極圏とグリーンランドへの船旅はまさにロマンを誘う感動の船旅であった。

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