7月20日(月・祝)
横浜港
待ちに待った皆既日食クルーズの出発日。横浜開港150周年イベント「開国博Y150」が開催されている中、横浜港大桟橋埠頭は、ぱしふぃっくびいなすの他に、帆船の日本丸・海王丸が停泊し、多くの観光客で賑わっていました。お客様の乗船手続が終わり、いよいよ出港です。船上のボートデッキではシャンパングラス片手に恒例の紙テープ投げが始まりました。華やかに舞ったテープはなんと2000個以上!祝日ということもあり、ターミナルには大勢の見物客。これから始まる皆既日食観測や船旅に期待を膨らませ、約540名のお客様を乗せ16時に横浜港を出港しました。出港まもなく、船内生活のご案内、乗船者全員で救命胴衣を着ての避難訓練を行った後、お客様同士和やかな雰囲気の中、夕食をお召し上がり頂きました。本船は東京湾を抜け、20時頃伊豆大島を通過。夕食後は日江井榮二郎先生の講演で日食の魅力に迫り、あっという間の1日目が終了しました。
7月21日(火)
航海日
2日目の明け方、船は青ヶ島の西、約130kmまで南下。依然として厚い雲に覆われた空。そして雨。午前中は本番当日さながらの観測リハーサルを行う予定でしたが、雨のため中止となってしまいました。本日の講演は、国立天文台の講師による「皆既日食観測の注意点」、桜井隆先生の「太陽活動と地球環境」、村山定男先生の「星と航海」、日食情報センターの講師による「日食観測のポイントとコツ」が行われ、皆既日食に関することだけでなく、天文について知識をより深めて頂ける講演となりました。夕方16時、船は孀婦岩の西、約140km付近を南下中。1日中、雨模様の天気だったため、観測地点検討委員会メンバーは非常にピリピリした状態だったそうです。夕食後は、ヴァイオリニスト・古澤巌さん演奏のスペシャルナイト。これまでのクラシック音楽の概念を外れ、古澤さん独自の照明や衣装、トークを織り交ぜた楽しいステージでお客様を魅了しました。明日はいよいよ皆既日食。フロントには大きなてるてる坊主が飾られるなど、乗船者全員が晴れることを祈りつつ就寝いたしました。
7月22日(水)
皆既日食観測
朝、南下を続けた船はようやく大きな雨雲を抜け、空を見上げると太陽が顔を出し、海はきれいな青色に輝き、凪の状態。昨日の雨がウソだったかのような天気に変わり、夏らしいとても暑い一日が始まりました。皆様も興奮を隠しきれないご様子で、朝食を済ませた後、観測の準備が始まりました。各観測場所では、三脚やシート、カメラ、望遠鏡などたくさんの機材が並んでいました。晴れてはいても空は所々に雲があり、遠くではスコールが見えるほどで、船は雲の合間を縫って、皆既帯中心線付近を航行していました。10時01分、第一接触。いよいよ日食開始です。皆既になるまでにはまだ1時間以上あるので、のんびりと涼んでいる方や、機材の準備をしている方、徐々に欠けていく太陽を日食グラスで観察している方など、お客様ご自身のペースで過ごされ、望遠鏡からの投影や、画用紙に穴を開け、ピンホールによって映し出された影で欠けた太陽を観測している方もいらっしゃいました。11時過ぎになると、日差しが弱まってきているのを感じました。日食グラスで覗き込むと太陽はかなり欠けていて、数時間前まで暑かったデッキが驚くほど涼しくなり、あたりもしだいに薄く暗くなってきました。もうすぐ皆既日食の始まりです。直前にはシャドーバンドを確認することができました。11時25分、第2接触。ついに皆既日食の瞬間です。輝くダイヤモンドリングから10数秒の後、皆既に突入しました。黒い太陽の周りにコロナが広がる様子はとても幻想的な光景で、頭上の空は夜の暗さですが、水平線上は夕焼け空。とても不思議な景色が広がっていました。太陽だけでなく、周囲の風景も見ることでき、今世紀最大と言われる皆既時間を存分に堪能することができました。11時32分前、第3接触。再びダイヤモンドリングが現れ、皆既日食が終了しました。船上では歓声に沸き、拍手をする方、バンザイをする方など、乗船者全員で皆既日食観測を喜んでおられました。まわりの風景は次第に明るくなり、暑さもだんだん回復し、12時52分、第4接触(日食終了)となりました。
観測地点は北硫黄島の東、約69km、皆既日食時間は6分38秒でした。午後の船内イベントは、日食総括の他、サイエンスカフェと題して「宇宙と音楽」「闇を楽しむ」、撮影発表会を開催。北硫黄島付近を航行していた本船は、硫黄島までいったん南下し、島をぐるり周遊。上陸はできませんが、なかなか見ることができない島を近くからご覧頂くことができました。そして夜はNHK日食特番中継があり、本島と船からの中継番組を船内のラウンジで見学。皆既日食時の映像や乗船者のインタビューなどで船内は盛り上がり、楽しい時間を過ごすことができました。夜のイベント・星空散歩ではスポーツデッキ付近を消灯し、頭上に広がる星空、天の川、流れ星と、満天の夜空をご覧頂くことができ、充実した素敵な1日が終わりました。
7月23日(木)
航海日
皆既日食観測から一夜明け、北上を続ける本船は10時頃、高さ約100mの孀婦岩の周りを周遊し、さらに北上を続け、1313時頃には天然記念物のアホウドリが生息する鳥島を周遊しました。本日の船内イベントは髙柳雄一先生の「神話で楽しむ星空」、小尾信彌先生の「宇宙と私たち」、的川泰宣先生の「糸川英夫と日本のロケットの歩み」の他、特別講演としまして和田昭允先生の「生命とはなんだろう?」、渡部潤一先生と鏡リュウジさんの対談「占星術VS天文学」と、多岐にわたる豪華な講演が目白押しで行われました。夕食前のさよならレセプションでは主催者NHKプロモーションと尾形船長のご挨拶。皆既日食が無事に観測でき、プレッシャーから解放された船長の安堵の表情が印象的でした。早いもので最後の夕食となり、皆既日食や船旅のことを語らいながら、楽しくお過ごし頂きました。
7月24日(金)
横浜港
午前9時、本船は横浜港に入港。あっという間に日食クルーズが終了し下船となりました。お客様の表情や、温かい言葉を頂き、とても感動いたしました。5日間の船旅ではありましたが、船旅が初めてのお客様がほとんどでしたが、船内生活をお楽しみ頂けたのではないでしょうか?知らないお客様同士で新しい出会いが生まれるのもクルーズの醍醐味でもあります。最大の目的である皆既日食を、皆既時間の長い硫黄島付近で観測することができました。船上の日食撮影には揺れの対策が必要ではありますが、移動ができること、機材の持ち込み個数に制限がないことが大きな利点であり、今クルーズは天文学の先生方をはじめたくさんの講演があり、充実した船内プログラムをご用意致しました。すべてが成功に終わり、関係者一同大変嬉しく思っております。これもひとえに、皆様方のご協力の賜物でございます。またいつの日か、船旅にご参加頂けることを願っております。この度のご乗船、誠にありがとうございました。お疲れ様でございました。
添乗員日記担当