7月6日(日)
成田→コペンハーゲン→ヘルシンキ
さあ、皆様の浪漫の旅がスタート!ご旅行をお申し込み頂いてから、この日を楽しみに首を長くしてお待ちになっておられたことでしょう。成田空港よりスカンジナビア航空984便にて、憧憬の北極点到達の熱い思いを胸に大空へ飛び立ちました。コペンハーゲンの空港の乗り換えでは、北欧らしいお洒落なシーフード料理をお召し上がりになられ、その後「バルト海の乙女」と言われているフィンランドの首都ヘルシンキに向かいました。ヘルシンキに到着した時には、すっかり町が寝静まる時間。明日から始まる未知の世界への冒険を楽しみにお休みになられました。
7月7日(月)
ヘルシンキ→ムルマンスク
午前中は景観の美しいヘルシンキの街を散策された方、お部屋でプライベートな時間を過ごされた方とそれぞれの時間を過ごされました。異国のレストランでの日本食と北欧名物のブルベリーやラズベリーに舌鼓を打ちました。 フィンランドを出国前には、皆様で記念撮影をし、フィンランド航空チャーター機でムルマンスクに飛び立ちました。ロシアの厳しい入国審査を逞しく我慢強く、そしてユーモアで切り抜けられましたね。 ソビエト時代を思い起こされる独特の雰囲気から解放され、赤と黒を基調にした大型砕氷船フィフティ・イヤーズ・オブ・ヴィクトリー号に乗船した際には、不思議な安心感を覚えました。
7月8日(火)
北緯70度26分・東経34度3分 気温5度(7:30時点)
本格的に船内での生活がスタートしました。まず、エクスペディションチームの紹介があり、今回は、なんとBBCのブルー・プラネットの専属カメラマンのダグ・アランが講師として招かれていました。船内で行われる北極講座でさまざまな分野の専門家のお話を聞き、教養を高め、ガイドブックにも載っていない貴重な情報を得られましたね。午後には、寒さも吹き飛ばす完全防備のパルカの試着会があり、実際に着るのが待ち遠しくなりました。そして、旅の楽しみといえばお食事!船内のお料理は、エレガントで味も盛り付けもすばらしく、食べてしまうのがもったいないくらいで、どこかしら夢がありオーストリア人シェフの遊び心を感じました。
7月9日(水)
北緯76度7分・東経44度7分 気温2度(7:30の時点)
朝の放送で本船の位置を聞き、パックアイス(積氷)突入に期待を膨らませ、新たな一日をスタートさせました。乗客が自由に行き来できるブリッジから、舵を取る船員達の横で大海原を進む迫力のある様子を特等席で見ました。また、なかなか入ることのできない原子力氷砕船のエンジンルームを見学させてもらえました。夕方には、日本人のお客様限定で貫禄のあるロシア人キャプテンのバレンティン・ダベディアンツと対談をしました。船長室でのインタビューの最中に、パックアイス(積氷)に突入し、歓喜一杯。思わず歓声があがりました!
7月10日(木)
北緯82度31分・東経52度4分 気温3度(7:30の時点)
朝目覚めると、地球の最果てとも思える世界が目に広がりました。私たちは好奇心の塊を持ち、遥か彼方から極地への浪漫を求め集まってきました。今回の旅の目的の一つを昼前に無事達成しました。なんと憧れの白熊発見!童心に返ったかのように目を輝かし、カメラや双眼鏡を片手にデッキに飛び出しました。今でもその感動的な瞬間は、鮮明に心に刻まれているのではないでしょうか。バーベキューの夕食前には海の神(ネプチューン)の儀式があり、北極到達に向けての鍵が船長に渡されました。皆様の北極点到達への一途な願いを船長に託しました。
7月11日(金)
北緯87度21分・東経55度49分 気温0度(7:30時点)
朝から激しく氷を割り進む氷砕船フィフティ・イヤーズ・オブ・ヴィクトリー号。多くの探検家が命をかけて挑んできた場所、そして今も昔も変わらず人間の探検心をかき立てる魅力がある場所・・・北極点が手の届く範囲まで迫ってきました。北緯90度に近づくにつれて、周りの氷も硬く、氷を砕く振動がズシズシと体に伝わってきました。「北極点到達間近」という放送を聞き、胸を躍らせながら前方のデッキに飛び出しました。その瞬間を今か今かと待ち焦がれ、ついに夜中0時6分に北極点到達!乗客全員お祭り騒ぎ!シャンパーンで乾杯し、日の丸を掲げ記念写真・・・興奮が冷めずに、なかなか寝付けなかったのではないでしょうか。
7月12日(土)
北緯89度57分・東経124度17分 気温1度(7:30時点)
満面の笑顔でタラップを降り、ついに北極の氷の上へ!北緯90度の看板を真ん中に円陣を組み、キャプテンの挨拶がありました。その後、地球の頂点で誇らしく日の丸の旗を持ち記念写真を撮りました。極点水泳では、凍るような北極の海に次から次に飛び込む人々の勇ましい姿を見ることができました。昼食は氷の上でバーベキュー!どんな御馳走よりも格別で、冷えた体も温まりました。待望のヘリコプター遊覧では、一面の銀世界と赤と黒の船体が眼下に広がり、圧巻!
夢のような光景に自然のパワーをもらい、最も感銘が深い一日になりました。
7月13日(日)
北緯88度28分・東経52度2分 気温0度(7:30時点)
朝、目覚める歓び!三つ指かもめに先導され、フランツ・ヨーゼフ・ランドに向け南下する船内で爽やかな一日がスタートしました。日本を発ってから一週間が経過しましたが、驚きと感動の連続!日本より遥か彼方にいることを改めて実感しました。夜は、ガラディナーがあり、親近感を抱くお茶目なオーストリア人シェフのグンターさんの演出で、珍重される食材のフォアグラやトリュフなどの高級食材がふんだんに使われていて、贅沢で極上の気分を味わいました。夕食後にはセレブレーションダンスタイムがあり、陽気な船員達も加わってお祭り騒ぎ!愉快な思い出ができましたね。
7月14日(月)
北緯84度34分・東経51度35分 気温0度(9:00時点)
昨夜、パーティーで夜更かしした乗客も多いためブランチが用意されました。毎日がスペシャル!平凡な一日で終わらないのが今回の旅。夕方に嬉しいサプライズがあり、ヘリコプター遊覧が急遽決定しました。青空に輝く白い雪や豪快に氷を砕くフィフティ・イヤーズ・オブ・ヴィクトリー号の絶景を堪能しました。夕食中には、白熊発見の速報!お食事もそっちのけで、レストランを飛び出し、方々に散らばる乗客たち。お休み前には、タイタニックを思い起こすような息を飲むほどの迫力のある大きな氷山の出現・・・感動と驚きの連続!今日も話の種がいっぱいの一日になりました。
7月15日(火)
北緯81度12分・東経55度9分 気温1度(7:30現在)
胸を弾ませながら、フランツ・ヨーゼフ・ランドの探検がスタート!
心地よい緊張感を持ち、ヘリコプターで上陸したジャクソン島のミル岬では、一面雪景色の中にお揃いの黄色いパルカが映えました。青空の下で、童心にかえって無邪気に走りまわったり、心に潤いを与える風景の中から自分だけの絶景を見つけられたりしました。また、空を流れる景色にうっとりし、大自然の懐で私たちは包まれていること、そして私たちは生きているのではなく、生かされていることを感じました。
7月16日(水)
北緯80度15分・東経52.01度 気温3度(6:30現在)
早朝、甲板に出て、私たちを真っ先に迎えてくれたのは牙を2本出したセイウチ。その後方のフッカー島のルビ二・ロックでは、極地の海鳥の子育ての場所を見ました。崖と空を行き来するハシブトウミガラスや三つ指カモメ鳥。大空を気持ち良さそうに飛ぶ鳥の姿や鳴き声が今でも鮮明に思い出されるのではないでしょうか。その後、フッカー島のティチャヤ・ブクタで旧ソ連時代の北極基地跡とツンドラの大地に一生懸命咲く花々や丘の上に飛び回るヒメウミスズメをご覧になられました。昼食時には、またまた人気NO.1の白熊出現!モデルのようにポーズを上手にとり、まるで愛嬌を振りまいているようでした。午後に訪れたノースブルーク島のフローラ岬では、弱肉強食の鳥の世界を感じ、大自然の動物に触れた一日でした。
7月17日(木)
北緯79度54分・東経58度32分 気温1度(7:30現在)
1873年11月1日にオーストリアハンガリー帝国の探検船テガトフ号が辿り着いたというウィルチェック島をヘリコプターで遊覧しました。観光ではめったに来ることのできない島を自分の眼で見て感動し、かつての探検家たちの喜びと悲しみが伝わってきました。探検は何があるか分からないもの。エクスペディションチームに率いられ、私たちの探検もクライマックスに近づいてきました。突然の放送で、急いで身支度・・・完全防備で集合!なんと救命ボートで船の周りを偵察。思いがけないアイディアでしたが、違った角度から船や島を見ることができ、とてもおもしろい経験になりました。
7月18日(金)
北緯76度51分・東経45度54分 気温3度(7:30現在)
朝レストランに入ると、いつものスタッフが素敵な笑顔で迎え入れてくれました。すっかり恒例と北極講座。エクスペディションリーダーのローリーさんが旧ソ連時代にシベリアからカナダまでスキーで横断したエピソードを話してくれました。多くの探検家が命をかけて挑んできた場所にこうして快適な船で来られた私たち。自然の中で逞しく生きる生命の息吹に心を癒され、雄大な自然美に引き寄せられた今回の旅。地球温暖化で変わりつつある極地の自然遺産を未来の世代に残すことの重大さを肌で感じ改めて実感しました。
7月19日(土)
北緯70度48分・東経36度22分 気温8度(7:30現在)
いたって波穏やかにムルマンスクに向け順調に航海中。三つ指カモメが私たちのお供をしているように船の横を飛んでいました。ムンククジラ発見の速報!最後まで動物との出会いに恵まれていました。夕食時には笑顔一杯のベークド・アラスカのパレードがありました。夜、荷造りをする心境が複雑。本当に終わってしまうのかなぁ。やっと船生活に慣れてきたと思ったのに・・・。クルーと最後のお別れの挨拶。1つ1つの縁・・・地球上にこんなにたくさんの人がいる中で、出会えて本当によかった!今回のご旅行が皆様にとって思い出深いものになりましたでしょうか。
7月20日(日)
ムルマンスク→ヘルシンキ
いよいよ下船日。名残惜しく後ろ髪がひかれる思いでフィフティ・イヤーズ・オブ・ヴィクトリー号と最後のお別れ。この時期には珍しいくらいの快晴の下、ムルマンスク市内の観光をし、第二次世界大戦の慰霊碑や頭にスカーフを巻いたお祈り熱心な女性たちが集まるロシア正教の教会を見学しました。ムルマンスクの空港を飛び立つ時には、「世界は1冊の本だ。旅をしないものは、その本の1ページしか知らないのと同じだ。」というセント・オーガスティンの言葉が頭を過ぎり、新たな1ページが加わったことへの幸せをしみじみ実感しました。
7月21日(月)→7月22日(火)
ヘルシンキ→成田
ヘルシンキの空港より、日本へたくさんの思い出と一緒に飛び立ちました。フィフティ・イヤーズ・オブ・ヴィクトリー号でのご旅行の余韻に浸りながらの空の旅おつかれさまでした。皆様、お帰りなさい!黄金の国「ジパング」へ・・・。次の航海はいつでしょうか。また、新たな夢の世界が皆様をお待ちしています。
それでは皆様お元気で・・・さようなら。
添乗員日記担当