西国三十三所とは、日本で最も歴史ある巡礼とされ、2府5県にまたがる33のお寺を巡る観音巡礼です。中でも最もお寺の数が多い京都には、どんなお寺があるのでしょうか。ここでは、西国三十三所の中でも京都にあるお寺の特徴や魅力をご紹介します。
1. 西国三十三所とは
西国三十三所とは、仏教で信仰されている「観音菩薩」を祀る33のお寺を巡る「観音巡礼」のことを指します。近畿地方の2府4県(京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、奈良県、滋賀県)と中部地方の岐阜県にまたがる範囲です。
33という数は、観音菩薩が衆生を救うとき33の姿に変化するという信仰に由来しているとされ、すべての寺院を巡って祈りを捧げると、優しさや心遣いなど素晴らしい心映えを身につけられ、充実した人生を送るとともに極楽往生ができる、と信じられています。
8世紀から1300年もの間続いているとされ、日本で最も歴史がある巡礼でもあります。そのため、文化庁により令和元年、日本の文化・伝統を語る文化財である「日本遺産」に登録されました。
2. 西国三十三所の巡り方
西国三十三所を巡るにあたっての順番、どのくらいの距離や時間になるのか、気をつけたいマナーについて解説します。
2-1 西国三十三所を巡る順番
西国三十三所には、それぞれのお寺に「札所」という順番がついていますが、必ずしも第一番札所から巡らなくてはならないというわけではありません。好きな順番で巡ればよく、期限も決まっていないため、巡りやすい順序やで好きな時期に行くと良いでしょう。
そもそも、歴史を紐解くと西国三十三所の順序は時代や参拝する人によってさまざまであり、現在の順番が定まったのは一般人の巡礼がさかんになった室町時代の15世紀頃とされています。公式ページには巡礼のおすすめコースも記載されていますので、参考にしてみてはいかがでしょうか。
2-2 西国三十三所を巡るとどのくらいの距離と時間になる?
西国三十三所を第一番札所から第三十三番札所までを順に巡ると、約1,000kmの距離があります。同じように巡礼地として知られる四国八十八ヶ所と比べて、数の割に距離が長いと感じるかもしれませんが、四国八十八ヶ所は円を描くように近い場所に位置しているのに対し、西国三十三所は2府5県に点在しているためこのように数に対して長距離を移動することになるのです。
札所と札所の間は徒歩で移動できる距離のところもありますが、場所によっては200km以上の距離があるところもあり、徒歩での移動は現実的ではありません。車やバス、電車などの交通機関を利用しながら、5〜8泊くらいかけて巡るのが一般的です。バスツアーを利用すれば、数回に分けて観光名所も回りながら行けるものもあります。
2-3 西国三十三所を巡る際のマナー
西国三十三所を巡るにあたって特有のマナーはありませんが、寺社を参拝する際に気をつけたいマナーとして、以下の3つのポイントがあります。
・山門で一礼する
・ 手水舎の柄杓に口をつけない
・ ろうそくの火をもらわない
まず、寺院に入るときは山門で一礼しましょう。帽子を被っている場合は脱ぎ、足下の敷居は踏まずに入るのがマナーです。手を清める手水舎では、口をすすぐときに柄杓に直接口をつけず、手に汲んでからすすぎます。また、ろうそくを立てるとき、ろうそくの火は他のろうそくからもらわず、マッチやライターでつけましょう。他のろうそくから火をもらうことは「もらい火」と言い、災いも一緒にもらってしまい縁起が悪いとされています。
3. 京都にある西国三十三所一覧
京都にある西国三十三所は、以下の11寺院です。それぞれの寺院の特徴や魅力について、詳しく見ていきましょう。
3-1 三室戸寺
京都府宇治市にある寺院で、ツツジとアジサイの名所として知られています。それぞれ約2万株が一斉に咲き誇ると壮観です。奈良時代に光仁天皇の勅願によって建てられました。境内には宇賀神(狛蛇)、狛兎、狛牛などさまざまな石像があり、それぞれにご利益があるとされています。源氏物語ゆかりの地でもあり、「浮舟」の石碑が建っています。
基本情報
名称 三室戸寺
住所 京都府宇治市莵道滋賀谷21
連絡先 0774-21-2067
WEB 三室戸寺公式サイト
3-2 上醍醐 准胝堂(醍醐寺)
京都でも有数の桜の名所で、豊臣秀吉も花見をしたとして知られています。文化財が豊富で、国宝約7万5千点、重要文化財約500点が国の指定を受けており、平成6年には「古都京都の文化座」として世界文化遺産にも登録されました。境内にたたずむ五重塔は、醍醐寺に手厚い庇護を与えた醍醐天皇の冥福を祈るため平安時代中期に建てられたもので、京都府下最古の木造建造物と言われています。
基本情報
名称 上醍醐 准胝(醍醐寺)
住所 京都市伏見区醍醐東大路町22
連絡先 075-571-0002
WEB 醍醐寺公式サイト
3-3 今熊野観音寺
四国八十八ヶ所巡礼でも知られる弘法大師(空海)が手彫りしたと伝えられる「十一面観世音菩薩」がご本尊で、頭痛封じや知恵授けのご利益があるとして知られています。また、同寺院の授与品である枕カバーを使うと頭痛、知恵や学問にご利益が得られるそうです。また、「枕草子」の作者である清少納言が生まれ育った地にほど近いとされています。
基本情報
名称 今熊野観音寺
住所 京都府京都市東山区泉涌寺山内町32
連絡先 075-561-5511
WEB 今熊野観音寺公式サイト
3-4 清水寺
国宝「清水の舞台」で知られる清水寺は、修学旅行などで行ったことがある人も多いのではないでしょうか。約13mもの高さがある清水の舞台は、「懸造り(かけづくり)」と呼ばれる日本古来の耐震性の高い工法で作られました。「古都京都の文化財」として世界文化遺産に登録されている同寺院は、春は桜、秋は紅葉と見事な景色にも恵まれ、国内外からたくさんの人が訪れます。
基本情報
名称 音羽山 清水寺
住所 京都市東山区清水一丁目294
連絡先 075-551-1234
WEB 清水寺公式サイト
3-5 六波羅蜜寺
重要文化財である「空也上人立像(くうやしょうにんりゅうぞう)」が見られるお寺です。教科書にも多く載っている同立像は、唱えた念仏「南・無・阿・弥・陀・仏」の1音1音がやがて6体の阿弥陀仏に変化したという伝承を表したもの。本尊である十一面観音立像は国宝に指定され、重要文化財である地蔵菩薩坐像もあるなど、仏像ファンにはたまらないお寺です。
基本情報
名称 六波羅蜜寺
住所 京都市東山区ロクロ町81-1
連絡先 075-561-6980
WEB 六波羅蜜寺公式サイト
3-6 六角堂頂法寺
587年、聖徳太子によって創建されたという頂法寺は、いけばな発祥の地としても知られています。代々六角堂の住職を務める「池坊」が仏前に花を備える中でさまざまな工夫をしていたことが、室町時代のいけばな成立に至ったそうです。御堂の形が六角形なことから、「六角さん」と呼ばれて親しまれており、門前を東西に走る道にも「六角通」という名前がついています。
基本情報
名称 紫雲山 頂法寺 六角堂
住所 京都市中京区六角通東洞院西入堂之前町
連絡先 075-221-2686
WEB 六角堂頂法寺公式サイト
3-7 革堂行願寺
地元の人から「こうどうさん」と呼ばれて親しまれる革堂行願寺は、西国三十三所で唯一の尼寺です。下京の町堂(人々が集まる集会所の役割を持つお寺)である六角堂に対し、上京の町堂が革堂で、戦乱や火災で何度も焼けて場所を変えながらも、常に都の中心部に再建されたという歴史を持ちます。
基本情報
名称 霊麀山 革堂行願寺
住所 京都市中京区寺町通竹屋町上ル行願寺門前町
連絡先 075-211-2770
WEB 革堂行願寺公式サイト
3-8 善峯寺
平安中期の1029年に開かれた善峯寺は、日本全国に同じ名前のお寺はないと言われています。高さ2mあまり樹齢600年の天然記念物である松は、横へ37m以上も幹を伸ばし、その姿は龍のようです。そのほか、薬師堂は京都市街を一望できる絶景スポットであり、春は桜、夏はアジサイ、秋は紅葉と四季折々の自然を楽しめることでもよく知られています。
基本情報
名称 西国第二十番札所 善峯寺
住所 京都市西京区大原野小塩町1372
連絡先 075-331-0020
WEB 善峯寺公式サイト
3-9 穴太寺
「あなおおじ」「あのうじ」「あなおうじ」などさまざまな呼び名で親しまれている穴太寺(あなおじ)は、705年に創立されたお寺です。「安寿と厨子王」でよく知られる厨子王丸肌守本尊を祀っており、安寿の助けで山椒大夫のもとから逃れた厨子王丸が都へ上る途中、厨子王丸をかくまった寺の一つだったとされています。布団をめくって撫でると病気が治るご利益があるとされる「なで仏」でも知られています。
基本情報
名称 穴太寺
住所 亀岡市曽我部町穴太東ノ辻46
連絡先 0771-24-0809
WEB 亀岡市観光協会公式サイト
3-10 成相寺
日本三景のひとつ、天橋立を望む景勝地にあるお寺です。西国三十三所の中でも最も北に位置するため、冬には雪が深くなりますので、参拝の際には注意しましょう。ケーブルカーや登山バスで、天橋立を眺めながらお参りに向かうのもおすすめです。願いごとが「成り合う」お寺としてよく知られており、本尊は身代わり観音、美人観音としても名高い聖観世音菩薩です。
基本情報
名称 橋立真言宗 成相山 成相寺
住所 京都府宮津市成相寺339
連絡先 0772-27-0018
WEB 成相寺公式サイト
3-11 松尾寺
京都府と福井県の県境にある松尾寺は、西国三十三所の中でも唯一の馬頭観世音菩薩を本尊としたお寺です。馬頭観世音菩薩は農業や牛馬畜産の守り仏で、馬畜産の守り仏のため、競馬関係者からの信仰も厚いそうです。国宝である普賢延命菩薩像(絵画)や、重要文化財である「阿弥陀如来坐像」なども見られます。
基本情報
名称 西国第二十九番札所 松尾寺
住所 京都府舞鶴市字松尾532
連絡先 0773-62-2900
WEB 松尾寺公式サイト
4. 西国三十三所の中でも京都は最もお寺の数が多い!効率よく巡ろう
西国三十三所の中でも、京都は最も数が多く、徒歩で移動できるほど近い場所もあります。一方で、かなりの距離を移動しなくてはならない場所もあり、バスツアーなどで効率よく巡るのがおすすめです。読売旅行では西国三十三所すべてを1回で巡り切れるツアーをご用意していますので、ぜひご利用ください。
とりっぷナビ編集部
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